崩れる脳を抱きしめて
著:知念実希人
【前にも言ったじゃないですか。誰だって、明日まで生きている保証なんてない。誰だって爆弾を抱えて生きているって。けれど、その爆弾に怯えていたら何もできない。だから、僕たちはただ一日一日を必死に生きていくことしかできないんです】
あらすじ
地元広島から終末医療専門の神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性ーーユカリに出会う。心に闇を抱える2人は次第に心を通わせていく。実習を終え、広島に戻った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く。
不審な死を遂げた彼女は幻だったのか!?
ユカリの死の謎を解くために碓氷は横浜に向かう。
そして、明かされる衝撃の真実とは!?
圧巻のラスト20ページに、あなたは驚愕し、感動する!!
ネタバレなし総評
僕は知念さんの作品を読むのは初めてなのですが、既に数多くの作品を執筆されているとのことで、本作を読んだあとに前作の優しい死神の飼い方を購入しました。前作のキャラクラーも登場しているそうなので、お時間に余裕がある方は前作から読むと、より本作品を楽しめることでしょう。
読みやすい文体でサラサラと読み進めることができ、難しい医学用語もわかりやすく説明されていて好印象でした。そこは現役医師である著者のため、心配は杞憂でした。
内容は、圧巻のラスト20ページという言葉に嘘偽りはなく、見事にぐいぐい引き込まれてしまい、気づけば一気に読んでしまっていました。本作品の大どんでん返しの連続はとても面白かったです。また、伏線がたくさん張られており、丁寧に回収されていて感動しました。あまり重要じゃなさそうな文章でも、ちゃんとした伏線になっていて驚きました。
また、ミステリー要素だけでなく、恋愛要素も忘れてはいけません。碓氷とユカリのこちらが読んでて照れ臭くなるようなやり取りは、なんとも言えない温かな気持ちさせてもらいました。所々、泣けるポイントもあり、涙もろいタカは目がウルウルしっぱなしでした。
恋愛とミステリーのどちらもが強すぎず、弱すぎず、バランスよく調和した作品でした。
しかし、恋愛とミステリーが大きく取り上げられていますが、その2つだけではありません。
終末医療という重いテーマも取り扱われています。
なぜ、自分がこのような重い病気にかかってしまったのか。
自分の生まれてきた意味とはなんなのか。
そういった疑問に著者なりの答えが書かれていたのも印象的でした。
最後に少し残念な点
多くの伏線が張られていて、うまくまとまりすぎている関係で、察しの良い人は結末が読めてしまうかもしれません。
あと、1つだけ納得するのが難しいところがあって、そこが残念な点でしたね。納得しづらかったところは次回のネタバレ感想で書きたいと思います。
まとめ
少し残念な点もありましたが、素晴らしい作品であることに変わりありません。ミステリーだけ、恋愛だけだと物足りない方はぜひ本作品を読んでみてください。必ずや皆さんのご期待に添える面白さであること間違いなしです。
次回はネタバレ感想を書きたいと思います。
1/21追記
ネタバレあり版の感想も書きましたので、ぜひ読後にご覧ください。読後前にアクセスしてしまうと、面白さが半減どころか10分の1になってしまいますので、気をつけてください!