崩れる脳を抱きしめて
著:知念実希人
今回はネタバレあり感想になります。
ちなみにあらすじとネタバレなし感想はこちらになります。
未読の方はここからの感想を読んでしまうと、面白さが半減してしまいますので、
絶対に読まないでくださいね!振りじゃないですからね!!
ネタバレあり総評
まず、ユカリが碓氷に初めて会った時に、頭に爆弾が埋まっているとかカウントダウンだとか、会うたびにチクチク言うところが少しクドいかなあと思ってしまいました。自暴自棄になってしまうのは仕方のないことかもしれないですけどね。
終末医療を行なっている病院ということもあり、誰かの容体が急変するなど死が身近にある職場ということで、リアリティがあるように思えました。研修医である碓氷だけで対処する場面がありましたが、特に怖気付いた様子もなく、自信を持って対処されていたので、相当できる人だなという印象でした。お金目的で脳外科を志すのであれば、瀕死の患者を前にしても、あれぐらいできないとダメなのでしょうね。すごい世界です。
ユカリの部屋で碓氷が勉強を始めたばかりの時、ユカリは始めから碓氷に気があるような様子で接していますが、碓氷はそこまでの気はなさそうでしたね。碓氷がお金と過去に囚われていたからなのですが、その感じは痛々しいほど伝わってきました。それも、ユカリが名探偵ばりの推理力で、切手が高価なものだと明らかにしました。所々にヒントはあったんですが、まさか切手が高価なものだったとは思いませんでした。なるほどと感心してしまいました。
碓氷もまた、囚われていたユカリを解放するために図書館に連れていくのですが、なぜ図書館に行くのとバスに乗るのが怖かったのか始めはわかりませんでした。しかし、この伏線はちゃんと最後に回収されて、納得のいく理由だったのでよかったです。まさか両親と乗っていた車が事故に遭い、それが原因で入院することになり、さらに失読症になっていたとは!高次機能障がいの中にそのような症状があるとは知りませんでした。
お互い囚われていたものから解放された後は、こちらが照れるぐらいの初々しさだったので、ニヤニヤが止まりませんでした笑
このまま付き合うのかと思いましたが、まさか断られて、そのまま亡くなったことになってしまうとは思いもよりませんでした。
その後、碓氷が様々なヒントからユカリの最後に辿り着きました。その結末が他に思いを通わせている人がいるとは!なんて悪い女なんだ!いま流行りの不倫か!と絶望に打ちひしがれました。とてつもないバッドエンドだ!!騙された!!!と憤りすら覚えました。しかし!それはユカリではなく、弓狩だったのです!
何を言っているのかわからねーと思うが、オレも何をされたのかわからなかった・・・
要するに、碓氷が弓狩環だと思っていた人が、朝霧由だったのです!
ちょこちょこユウ(本物の弓狩)が絡んでくるから、それなりに重要なキャラなんだろうと予想していましたが、綺麗に騙されてしまいました。
でも、ホントユカリ(本物の朝霧)が生きていてくれて良かったです。感動で目が潤みました。ようやく、ユカリに碓氷の思いを伝えることができ、2人は見事思いを通わせることできました。いや〜このどんでん返しがなければ、とんでもないバッドエンドで僕は本を床に投げつけていたでしょう笑
チンピラたちは完全なネタキャラでしたね笑 下っ端臭がすごかった。
最後に僕が納得できなかった点についてですが、それは碓氷がちゃんとユカリのカルテに書かれた名前を見なかったことです。というか、見落とすことなんてあるんですかね。だって1ページに書いてあるんですよ。カルテがユカリのものか確認したはずなのに気づかなかったなんて・・・ここだけは納得するのが難しかったです。
この1点以外は素晴らしい作品でした。ぜひ本屋大賞を獲ってほしいものです!